マニュアルが勝手に差し替えられた?フランチャイズあるある

フランチャイズ契約を結ぶ際に、取引条件などを詳細に記載したマニュアルを店舗に備付ける企業が多いなか、契約後、加盟店に承諾もなくマニュアルの内容を勝手に差し替えられたというトラブルが後を絶ちません。

マニュアルはフランチャイズビジネスを展開していく上で重要であり、加盟店は基本的に本部のマニュアルに沿って店舗運営をします。マニュニアルに経営ノウハウの全てを記載することはできませんが、商品・サービスの質を一定に保つためには必須の書類となるはずです。

しかしながら、公正取引委員会の調査によれば、マニュアルを作成しているフランチャイザーと契約しているコンビニエンスストアの加盟店のうち、「了承なく勝手に内容の差し替えがあった」と回答した割合が43.5にのぼることが分かりました。

企業のコンプライアンス上でも問題がありそうな勝手な差し替え行為。トラブルを未然に防ぐためにも、「取引条件の一方的変更」に関する事例を知っておきましょう。

本部が作成するマニュアルについて異議あり!

公正取引委員会資料によると、「本部が取引条件等の内容を詳細に記したマニュアル(店舗運営資料)を店舗に備え付けている」企業は、コンビニエンスストアでは90.2%、それ以外で46.7%とされます。

マニュアルの有無

備え付けている 備え付けていない
コンビニエンスストア 90.2% 9.8%
コンビニエンスストア以外 46.7% 53.3%

(公正取引委員会資料より作成)

4割超が「了承なくマニュアルの内容一部差し替え」

マニュアルを備え付けているフランチャイザーについて、「マニュアルについて問題があるのではないかと思われる本部の行為」を調査したところ、コンビニエンスストアでは「オーナーに了承なく勝手にマニュアルの内容が差し替えられた」が最も多く、43.5%となりました。

次いで、「取引条件が記載されているのに、コピー不可とされている」19.8%、「実態が変わったのに、マニュアルの内容が変更されない」19.5%、「実態が変わっていないのに、記載内容が変更された」14.6%、「その他」32.2%と続きました。

コンビニエンスストアの場合

問題と思われる行為 割合
オーナーに了承なく勝手にマニュアルの内容が差し替えられた 43.5%
実態が変わったのに、マニュアルの内容が変更されない 19.5%
取引条件が記載されているのに、コピー不可とされている 19.8%
実態が変わっていないのに、記載内容が変更された 14.6%
その他 32.2%

(公正取引委員会資料より作成)

コンビニ以外ではマニュアルが形骸化?

一方、コンビニエンスストア以外では、「オーナーに了承なく勝手にマニュアルの内容が差し替えられた」割合は16.7%に止まりました。しかし、「実態が変わったのに、マニュアルの内容が変更されない」は66.7%におよび、マニュアルが形骸化していると感じるオーナーが多いことが分かりました。

コンビニエンスストア以外の場合

問題と思われる行為 割合
オーナーに了承なく勝手にマニュアルの内容が差し替えられた 16.7%
実態が変わったのに、マニュアルの内容が変更されない 66.7%
取引条件が記載されているのに、コピー不可とされている 0.0%
実態が変わっていないのに、記載内容が変更された 0.0%
その他 33.3%

(公正取引委員会資料より作成)

(複数回答あり)

フランチャイズにおけるマニュアルの存在意義とは

フランチャイズ研究会の高木仁氏は、フランチャイズビジネスにおけるマニュアルの重要性について次のように述べています。

「マニュアル作成の最大の目的は、提供する商品やサービスの品質を一定のレベルに保つためである。共通のブランドを使用してチェーンビジネスを展開する場合、商品を作る人やサービスを提供する人が異なっても一定で同質の商品やサービスを提供しなければ、ブランド価値が高まらない。マニュアルによってオペレーションを標準化することで、商品やサービスを提供するまでのプロセスでのバラツキがなくなってくる。そして、『あのチェーンに行けば、大体このくらいの商品やサービスが受けられる』という、顧客の安心感を得るようなオペレーションを目指さなければならない。ブランドには大きく分けて「出所表示機能・品質保証機能・広告宣伝機能」という3つの機能があるが、マニュアル作成はこの中の「品質保証機能」を担保するために必要不可欠なタスクである。」(参照:東京都中小企業診断士協会

また、企業のコンプライアンス遵守の観点からもマニュアル作成は大切だとします。

「企業のコンプライアンスという観点からもマニュアルは重要なものとなる。事業責任者の悪意による不祥事を防止するのはもちろんのこと、無意識による過誤を避けるためにも、事業責任者の責任範囲や、業務内容を明確にする必要がある。そのため、これらを明確に規定した管理マニュアルという形で整備する必要がある」

作成したマニュアルを加盟店オーナーの了承なく書き換える行為は、コンプライアンス遵守の精神に反するだけでなく、企業の信頼性を損なうことにもつながります。

フランチャイズビジネスを円滑に行うために、マニュアルの作成と、コンプライアンス遵守の精神が求められます。